中小企業と商社
甲製靴の社長山田さんは、大手製靴の関連会社として下請けを営んでいますが、
このところ思うように販売利益をあげることができません。
そこで何とか自社ブランドの靴を販売したいと考え、 靴屋の経験から年寄り向きの靴を開発しました。が、これをどうして販売したらよいかさっぱり分かりません。
やっとのことで商社とコネがつき、売り込みにいったところ、興味を示されたのはよかったのですが、「特許は出願していますね」と聞かれました。
山田さんは、一瞬なんのことか分からなかったのですが、機転を利かして、出願していますと答えました。
解説
1.製靴業の山田さんが、自己の商売の経験に基づいて年寄り向きの靴を開発したのは、正解なのでしょう。
中小企業は自己が得意とする業種或いはそれに近いものに開発力を集中するべきです。
自社の商売から離れた商品を開発したとしても、
そのような商品は既に 何万人の人が考えていたものであると認識すべきです。
2.「特許は出願していますね」と商社が言った裏にはいくつかの理由があります。
理由1:その商品の信用性の問題です。
その商品がどこかの商品を真似た怪しげな商品でないことを確かめています。
怪しげな商品を扱うことは商社の致命傷となることがあるからです。
理由2:その商品をその商社が取り扱う場合、山田さんの会社から仕入れる必要があるかを確かめているともいえます。山田さんに何の権利もなければ、勝手に山田さんのアイデアを使うことも可能なのです。
理由3:その商品が有望なときに、権利があれば商社は他社の追従を阻止できるので、優位に商売ができるからです。
3.「特許は出願していますね」とは、要するに山田さんの開発した靴について、
特許出願や実用新案出願、或いは意匠出願といった、知的財産の取得手続きをしていますかということです。
教訓:中小企業が商社等に取引を持ちかける場合は、知的財産の取得手続きをしておくと商売が進みやすい。知財のことを聞かれたら、とりあえず出願していますと答える。